国境を超えて子育てに挑む:日本語のある生活

ニュースレター2012年6月号より抜粋

マイヤー 真生 著

外国生活で、日本人の親同士であれ、国際結婚であれ、母国語を維持し、子供に日本語を伝えたいという思いは誰にでもあるものだと思います。世界中で海外在住の日本人数が増え、ここ西オーストラリアでも近年日本人の若い世代の人口が増加して来ています。子育てで言葉の教育に不安でお悩みの方々も多いと聞いています。ここでは、まず簡単に我が家の3カ国語の生活について少し触れ、次に、家庭での日本語教育についてのアイデアや提案などをお話したいと思います。26年間の長い海外生活の中、様々な経験の中ほんの少しだけですが、私のお話が何か若い皆さんの参考になればと願っています。

 

私はオーストラリアに来て以来、こちらで教師の資格を取り、約10年間ぐらい日本語の教師として、小学3年から12年生(高校3年)までを教えてきました。ですが、実際学校で外国語として日本語を教えるのは、家庭で生活用語として日本語を教えるのとは全く種類も、教え方のアプローチ法も違うので、失敗も多くありました。言語学の専門家でもありませんが、今振り返ってみて、言葉を楽しく教えるという教育法を応用して、自分の子供との日本語のある生活に取り入れられた事はプラスになったと思います。

 

我が家の挑戦:3カ国語をどうする?

我が家は15年前に西オーストラリアに落ち着く前に、ドイツに7年、そしてイギリスに6年と、国から国へ渡る「根無し草」のような生活が続きました。息子は二人ともドイツで生まれ、長男が3歳半、次男が7ヶ月でイギリスに移るまでは、日本語に接する時間は、家庭内で私が話しかける他には、同じ町に住む、偶然知り合った同い年の二人の男の子の日本人のお母さんとその家族との交流だけでした。イギリスに移ってからは3カ国語をどのように学ばせて行くかが新しい課題となりました。父親の母国語のドイツ語、母親の母国語の日本語を、子供たちの第一言語(primary language)となった英語での生活環境の中で均等に教えていくのはかなりの挑戦となりました。実際には主人は仕事で子供と接する時間も少なく、必然的にだんだんドイツ語を話す機会も減って来てしまいました。その後、小学校ではオーストラリアに来てから日本語を勉強するようになったため、何とか日本語のある生活は維持できましたが、反省としては、もう少し徹底して日本語ならずドイツ語を積極的に使う家庭内生活環境を作り出すべきだったと感じています。

 

ことばを通して子供との絆を強める

長男が生まれて間もなくの頃を思い出してみると、日本語で子供に話しかけるのが一番自然に感じ、家庭内でも外に出ても子供に話しかけるときは日本語でした。当時フルタイムの仕事先から産休を一年もらい、子供が一才になる頃に仕事に復帰することを考えている時に、復帰するとすればフルタイムしかなかったため、随分悩みました。デイケアではドイツ語での生活になって、子供に日本語に触れさせる機会が大幅に減ってしまい、大事な息子との絆が奪われ、何か大切な物を失ってしまうような気がしました。結局仕事は辞め、母親業に専念することに決めました。 子供の言語教育の家庭方針を夫婦間でよく話し合って決めておく事は良いことだと思います。特に国際結婚の場合、オーストラリアの家族の方々にも、事情をよく理解をしてもらうことが大切です。

 

「教えなければ」と意気込まず、「一緒に楽しもう」

下記に紹介するのは、日本語の教え方のアイデアや提案などを、他のお母さんたちのお知恵も借りて主に幼児から小学校低学年ぐらいを対象に集めたものです。参考にしていただければ幸いです。子供はそれぞれ個性のある一人の人間ですから、子供さん一人一人の生まれてもった性格、年齢、置かれた生活環境、家族との関係、性別などの様々な要素が微妙に言葉の習得に関わってきます。可愛い我が子をやさしく見守りながら、子供さんの行動や気持ちに注目して上げることが大切です。

基本的な姿勢として、何でも楽しく遊びながらすることです。親が一方的に教えるというよりも、子供が積極的に活動に参加できて、親も楽しい遊び方を子供に教えてもらうぐらいの気持ちになれたらより効果的だと思います。そして、常にほめてあげることです。また、「日本語の接触時間はバイリンガル教育の鍵のひとつ」だということを心においておくと良いと思います。

 

話すこと/聞くこと

      • 日本語で話せる機会をできるだけ多くもたせ、 子供とだけいる時は、日本語でしか話さない。
      • 日本語が分からない人がいる時は、英語にかえる。
      • 日本語を話しているとき、英語の単語が混ざっ たら、その単語を日本語になおして、くりかえさせる。いやがれば、子供が、その言葉を覚え るように常に自分で使うようにすれば、そのう ち覚える。
      •  毎晩夜寝る前に、“Good night story”の時間 を作り、日本語の絵本を読んで聞かせてあげ る。これは赤ん坊のころから始める。
      •   日本の歌(童謡など)を一緒に歌う/替え歌を作る遊びも楽しい。
      •   テレビやDVDで、まんがやアニメなどを見るのもよい。
      •   パースの映画祭などに連れて行って、家族で楽しむ。

読むこと

      • まず、自分も子供の心にかえって、いっしょ に楽しむ。
      • ひらがなの積み木であそびながら読み方を覚えさせる。
      • 絵付きのひらがなとカタカナチャートを子供の手の届く高さの壁に貼る/これでひらがなやカタカナを見つけるゲームや言葉作りの遊びなど色々できる。
      • 子供の読む能力を考慮しながら、少しずつ、読ませる量を増やして行く。飽きて来たら続けないで、上手に読めるようになったことを褒めてやる。その後いっしょにケーキを作ったり、 キャッチボールをしたりして遊ぶのもよい。
      • 買い物ができるようになると、日本語のリストをわたして、手分けして買い物をする。

書くこと

      • ひらがなの鉛筆習字。
      • 書道セットを使って、楽しくお習字をする。 (お習字は5、6歳ぐらいから)
      • 海が近ければ、海に連れて行って、砂の上で漢 字のおけいこをする。(字がきれいに見える)
      • 毎年、書き初めを親子でして、お絵描きもいっしょにし、アルバムに子供の成長をつづっていく。
      • 日本のおばあちゃん、おじいちゃんなどから年賀状や小包みが届いた時に、お礼の手紙を定期的に書かせる。

その他、コンピューターを使っての教材や楽しいゲーム、子供番組などもたくさんでていますし、オンラインでも楽しく遊べるものが豊富にあります。お母さん同士で色々情報交換するのも楽しいでしょう。また、日本に一時帰国の折に、小学校で「体験入学」をさせる人も多くいると聞いています。

 最後に

最後に、21世紀のグローバル化された世界では、バイリンガルの子供たちはどんどん増えてきています。実際移民の国オーストラリアでは1970年代の後半以来、多文化主義(multiculturalism)を国の方針としています。政府の統計によると、オーストラリア国内には現在270以上の民族/文化グループが存在し、260語ほどの様々な言語が使われているそうです。(参考.DIaC, 2011:p.2) 英語と日本語だけでなく本当に多くの文化や言語が共存していることが分かります。時代を超えて海外で子育てをする苦労は今も昔も変わりませんが、海外で活躍する日本人の若い人々がどんどん増えて来て、子育てという大事業に携わる経験を分かち合う仲間が周りに沢山いるのは大変心強いことだと思います。将来異文化理解の先端を行くであろう子供たちの未来のために、優しく強く、子育てに頑張って下さい。

 

参考文献:中島和子 2011, バイリンガル教育の方

法:12歳までに親と教師ができること

東京:株式会社アルク

Australia, Department of Immigration and Citi-zenship (DiAC). 2011.

The People of Australia: Australia’s Multicul-tural Policy.

http://www.immi.gov.au/living-in-australia/a-diverse-australia/

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